若年労働力の供給が相対的に不足しているために企業がお互いに他企業に引けをとるまいと企業間競争をくりひろげ、前へ前へと事実上の採用活動をくり上げて行うことがその大きな原因だが、こうした企業行動をあながち非難ばかりすることもできない。なぜなら、企業にとって大卒者を一人雇うということは実はきわめて大きな経営判断を要することだからである。大卒者を一人雇うということは、現在のような雇用慣行を前提にすれば、この人が定年退職するまで三〇年ないし四〇年雇いつづける事を意味する。
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それは生涯賃金でいえば総額二ないし三億円ぐらいの長期的な設備投資と同じような意味を持っている。ふつう企業が二億や三億円もする機械を買うとなればきわめて詳細かつ厳密な審査をし、性能検査をし、品質保証をとりつけるなど、充分な検討をするはずである。人材の場合にはふつうの機械のように性能や品質がはじめからそれほど明らさまには判らないだけに、より多くの手間ヒマをかけて人物を調べる必要があるはずである。したがって、就職協定のように就職や採用活動の期間を短く限定してしまうようなしくみには最初から無理があるのである。短期間にそれだけ詳しい審査をすることは企業にとっても困難だし、まして、学生には情報が乏しいだけにさらに困難が大きい。そこで企業も学生も、就職協定のあることを知りながら実際にはお互いに水面下で早くからコンタクトをしてお互いを知るための活動を開始せざるを得ないのであり、それは人材というものが貴重で大切であればあるほど当然の事なのである。